




昨今、〝江戸の華〟と称えられる吉原遊廓──。本当に華であったのか。
真っ向から「リアルな吉原」を解説する本書。吉原の概要・来歴、遊女の境遇、妓楼で働く遊女以外の人々、性病や折檻といった闇など、包み隠さず解説。
■著者はしがき(抜粋)
吉原は公許の遊廓、つまり幕府公認の売春地区であり、遊女は娼婦(売春婦)だった。(中略)
冒頭から露骨な表現になったが、じつは吉原を江戸の華などと称揚し、美化するなかで、肝心の点がややあいまいになっている気がするからである。そのため、まず、前提を明確にした。
とはいえ、吉原は現代の感覚でいうところのたんなる売春街ではなかった。江戸最大の観光地であり、一種のテーマパークであり、江戸文化の中心でもあった。(中略)
江戸を題材にした戯作(小説)、音曲、芝居、浄瑠璃、浮世絵、錦絵、工芸品は数が多い。また、芝居と並んで吉原は着物や髪型などファッションの流行の発信地でもあった。吉原を抜きにして江戸文化を語ることはできない。(中略)
だが、いっぽうで悲惨な暗黒面もあった。(中略)
すべて物事には暗黒の二面性がある。そして、光が強ければ強いほど、陰になった部分の闇は深い。吉原は華やかな世界と理解されているだけに、つまり「明」があまりに光り輝いているだけに、その陰になった「暗」も濃いといえよう。
本書では、「明」はもちろんのこと、「暗」の部分も避けることなく取りあげたし、いわゆる俗説や伝説にも疑問を呈し、私見を述べた。また、できるかぎり吉原の遊興の仕組みや実態を解説するようにつとめた。
■永井義男 略歴
1949年、福岡県生まれ。97年『算学奇人伝』で第6回開高健賞を受賞。他の著作に『江戸の下半身事情』『お盛んすぎる江戸の男と女』『江戸の性語辞典』がある。
■書誌情報
・著者:永井義男
・発行:朝日新聞出版
・発行日:平成27年
・文庫 / 350ページ / モノクロ