長田幹彦『秘本・阿部お定』のレビュー

長田幹彦『秘本・阿部お定』
長田幹彦『秘本・阿部お定』

テレビ番組で偶然貴社を知り、本書を購入しました。 所々、誤植とみられる箇所があったのだけが残念でした。

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Nさん

伊藤裕作氏の解説は全く不要であるどころかこの本自体の価値を貶めている。それは阿部定劇に関する「24年には劇作家の長田幹雄が劇団を立ち上げ、阿部定自身がヒロインを演じる『昭和一代女』を半年間地方公演し、その後、東京・浅草の『百万弗劇場』で上演する」とする記述がウィキペディアからの受け売りであり、しかもウィキペディアの記述がデタラメだから二重にタチが悪い。長田幹雄は阿部定に「浮寝鳥」の脚本を送ったただけで、劇団を立ち上げたりしないし、また「昭和一代女」なる作も存在しない。これは国会図書館のフランゲ文庫で可能な限り調べたから証拠資料を提出することも出来る。 阿部定が「浮寝鳥」一幕物をもって実演の旅に出たのは昭和22年の12月であり、その初日が17日であることはこの本の資料集によって得た収穫であったが、不案内な読者が読めば22年に「浮寝鳥」、その二年後の24年に「昭和一代女」をもってドサ回りをしたと誤解するに違いない。また阿部定が初めて東京公演したのは23年9月11日初日の浅草常盤座においてであり、初演から半年ではなくほぼ十ヶ月後ということになる。 23年6月に常盤座出演中のストリッパー、ヘレン滝が検挙され裸ショウを自粛することになった常盤座がその穴埋めとして急遽組んだものが阿部定の「浮寝鳥」であり、常盤座としても大して集客に期待をしていなかったことは「人間火炎放射」が目玉の三本立て公演の添え物として組まれたことからもうかがえる。阿部定の百万弗劇場公演はずっと後の28年、浅香光代の二月興行があけたこれまた穴埋めに、浅草で旅館経営をして市井にひっそりと暮らしていたお定を百万弗劇場が無理に引っぱり出して実現したもので、阿部定以外のキャストは資料集にある「お定さんと旅をゆく」の当時とは異なり百万弗劇場の座付き役者が演じたものと思われる。 百万弗劇場の座付き役者といえば渥美清が有名だが渥美が「浮寝鳥」に出演したかどうかは微妙なところで分からない。フランス座に引き抜かれる前だったら出演した可能性はある。

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好事家さん