実態調査全国赤線青線地区総覧(昭和29年)
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実態調査全国赤線青線地区総覧(昭和29年)

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甲府「旅館布団より肉布団…甲州娘はブドウより味がよいとは体験者の談…」〟 ■書誌情報 ・題号:『実態調査 全国赤線青線地区総覧』 ・原著編者:中村三郎 ・文字数:約45000字 ・仕様:A5変形 / 64ページ / 中綴じ 昭和29年にリリースされた『実態調査 全国赤線青線地区総覧』を復刻。 ■全国を〝股〟に掛けた赤線と青線の実態調査  現在と較べれば、まだまだ移動手段や(特に)通信手段の未成熟な敗戦直後〜昭和30年中盤以前に、色街を調査した著作は、赤線や歓楽温泉境ですら『全国女性街ガイド』のようにほんの数える程しかない。まして青線という当時としても完全にアンダーグラウンドの世界を切り取ろうとした記録は極めて珍しい。  全国各地の赤線街と青線街の特徴、料金体系、女の味を総まくりにまくり、一度に纏めた記録であることから、その奇異さたるやご理解頂けるであろう。45000字64頁とボリュームもたっぷり。  今回の資料は複数の記事から構成されている。各記事を簡単にご紹介。 ■全国主要赤線地區案内  北海道から九州まで有名どころ、トピック的な赤線地帯が紹介されており、女と店の特徴は当然ながら、とりわけ屋号など現在において赤線調査を行う上で貴重なカギになり得る記述が多く見られる。  取材された時代も絶妙なタイミングで、今では有名な大阪飛田新地の料亭「百番」が、まだ現役の妓楼で「桃山閣」という屋号で営業していた頃のサービス内容も掲載。有名どころの他、因の島や奄美大島など、かなりのレアなスポットについての記述も見逃せませない。 ■全国青線地區めぐり  こちらはグッと猟奇的な響きを帯びた記事。都内では、新宿花園神社(今のゴールデン街界隈)にあるバーの二階、新宿旭町(現4丁目)や山谷のドヤ、上野や渋谷駅周辺など、いわゆる素人売春のはしりなどの記述がある。  遊郭に対しての岡場所、赤線に対しての青線など、いつの時代にも必ず非合法なモグリ営業があったとはいえ、それらを全国縦断して纏めているから前代未聞という外ない。 ■ナンバーワン御紹介  全国各地の赤線地帯から5人のナンバーワン・ミス女給を選出する、というこの時代だからこそなれば許された企画…。赤線と勤める店舗名、まさかの女の実名(源氏名)まで掲載。 ■東京都赤線主要街一覧表・全国赤線主要街一覧表  「東京都赤線主要街一覧表」は、都内都下の赤線地帯を表化したもの。営業者数(店舗数?)、女給数、特徴、価格体系、交通手段などコンパクトに纏められている。例えば小岩の赤線「東京パレス」欄では、料金体系をチケット制としており、実地調査無くしては知りえない内容など掲載。 「全国赤線主要街一覧表」は上記の全国版。 ■変り種遊女銘々伝  変わった性行・性癖を持つ赤線女給の紹介文。一貫して読み物の体裁で面白おかしく綴ってはいるが、吉原組合長の成川という実在した人物の名前も登場。 ■漂客変人伝  これは遊客、つまり男性側の変人エピソード版。 ■戦後売春史のキーマン、中村三郎  先般復刻した『白線の女』編者、中村三郎。この中村が当著でも編者を務めている。赤線愛好家の間で、まだまだ知名度が低い印象のある中村だが、戦後、売春防止法容認へ世論が流れていく中で、実に興味深い活動テリトリーを持っていた人物である。  売春防止法施行を僅か4ヵ月後に控えて、街娼を主とした白線の女たちからの証言をエピソード調に纏めた『白線の女』の発行についても、「赤線が廃止された後、働き場をなくした女たちは果たしてどうやって生きていくのか?」を問うための(勿論、商売気も感じさせる)企画だったが、中村は必ずしもそういった肩の凝るような内容ばかりではなく、当著のようにカストリ雑誌の一企画に参加するなどの動きも見せています。  売春防止法施行や売春撲滅に尽力した菅原通済(1894〜1981)が、エロ・グロを本懐とするカストリ雑誌紙面上において、例えば読者からのえげつない性相談に対して、時には真面目に時にはおふざけながら回答する連載企画に識者として参加していたように、この時代の色街文化とそれを取り上げる出版社、見識を提供する識者(著者・編者)というものは、現在の我々の一般常識とはまた掛け離れていた。テレビという一大マスエンターテイメントが登場して、倫理観を含む多くの価値観が〝漂白化〟されていない時代の記録。  赤線業者は売春防止法制定に抗うため、〝赤線は正業。性病やそれに罹った街娼が蔓延するのを食い止めるのが役目〟という論法を用いようとしていた意志を、カストリ雑誌を通じても発信しようとしていた様を窺い知ることができる。  戦後活躍した無名の売春史研究家、中村三郎が記した雑誌記事としては恐らく最大のボリュームとなる当著の復刻が、赤線青線だけではなく、中村三郎なる人物の再評価・再定義に繋がることを願いたい。